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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)2431号 判決 1989年1月30日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは、「原判決を取り消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述及び証拠関係は、次につけ加えるほか、原判決事実摘示及び記録中の当審における書証目録

記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

一  控訴人ら

1  被控訴人は、昭和五八年七月一一日東京簡易裁判所に対し、控訴人らの被相続人である亡佐々木真太郎を相手方として同庁昭和五八年(ノ)第一六八九号抵当権設定登記の抹消登記手続請求の調停を申し立てた。

2  被控訴人は、右申立に際し、申立書の「紛争の実情」及び準備書面において、新日本観光興業株式会社と新日本北海道株式会社との間の昭和五六年四月二四日付準消費貸借契約に基づく借受金債務及びこれに対する被控訴人の併存的債務引受契約に基づく債務の存在を認める「承認」をなし、これにより時効が中断している。

二  被控訴人

右控訴人ら主張の第1項の事実は認め、同第2項の事実は否認する。

理由

一  当裁判所も、被控訴人の請求は理由があるものと判断するものであり、その理由は、次につけ加えるほか、原判決理由説示と同一であるから、ここにこれを引用する。

控訴人は、時効の中断事由として、被控訴人が亡佐々木真太郎を相手方とする抵当権設定登記の抹消登記手続請求調停事件において、本件抵当権の被担保債権につきその債務の存在を認めて承認した旨主張するが、原本の存在及び成立に争いのない乙第三、第四号証によっても、被控訴人が控訴人主張のように債務を承認した事実を認めることはできず、かえって、右各書証によれば、被控訴人は、控訴人主張の調停申立書並びに同準備書面において、本件抵当権設定は被控訴人の未経験、軽卒に由来する錯誤によるものであると主張して、その被担保債権につきその有効性を全面的に争っていることが認められ、これが債務承認したものではないことは明らかである。そして、原本の存在及び成立に争いのない乙第五号証によっても右認定判断を覆すに足りず、他にこれを動かすに足りる証拠はなく、控訴人の前記主張は採

用できない。

二  したがって、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であって、これが取消しを求める本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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